日本では、失業したり、怪我や病気をするとなかなか生活を建て直せないといったイメージが強いと思います。
納税や勤労など、国民としての義務はわりと早い段階から教育されますが、それを支払ったことによる対価については意外と知られていないことが多いものです。
今回は私の実体験から、意外と助かる日本のセーフティーネットについて紹介します。
はじめに
【!】当記事は、正しい情報を掲載することを心がけておりますが、掲載されている情報については地方自治体や施行されている法律によって変化するため、全ての効果を保証するものではありません。
また、手当などを不正に受給すると法により罰せられます。記事の内容やリンク先からいかなる損害が発生した場合も、当方では責任を負いかねます。
それでは、よろしくお願いします!
怪我・病気によって高額な医療費がかかる
ケガや病気によって高額な医療費がかかる場合、高額療養費制度を用いることで自己負担額は一定に抑えられます。
10年ほど前の話になりますが、良性腫瘍の摘出手術で40万円程度の医療費がかかり、こちらの制度を用いることで自己負担額は10万円程度となりました。(治療は全て保険内診療)
なお、こちらの制度では、個室を使用した場合の差額ベッド代や入院中の食事代までは含まれません。
そのため、高額療養費制度でまかなえない部分を、医療保険などでまかなうのがベターだと思います。
こういった制度もあるため、医療保険や生命保険のプランも「本当に必要か?」を見極めて選択することが大切です。
病気やケガにより仕事ができない
会社に勤めていて、怪我や病気で仕事に行けなくなってしまった場合、国民健康保険より傷病手当を受け取ることができます。
こちらはあくまでも、「仕事とは関係ないところでケガや病気をした場合」に受給可能な手当です。
業務上の負傷などは、労災保険に該当します。
しかし、うつなどの精神的な病は仕事上の要因がほとんどであるにもかかわらず、原因を作っている会社側がそれをすんなりと認めるはずはありません。
立証するにも非常に工数がかかるため、まずは傷病手当金を受給する段取りをして、後のことを考えた方が良いです。
私は社会保険加入中にこちらの制度を利用しましたが、国民健康保険でも同じように利用できるそうです。
傷病手当を受給する流れ
傷病手当を受給する流れは以下のとおりです。
- 医師から就労不能である旨の診断が下る
- 会社側にも就労不能である旨を伝え書類の記入を依頼する
- 全国健康保険協会への申請を行う
- 受給
ここで大切なのは、就労不能であるということです。「軽作業であればできる」といった状態ではいけません。
そのため、傷病手当受給中のアルバイト、内職、家業手伝いなど「就労」に該当することは認められません。
受給できる金額は、月給の約7割程度です。失業保険と同程度の金額と思っていれば問題ないです。(受給中も社会保険または国民健康保険の支払い義務は発生します)
実際の月収から7割程度まで収入が減ったとしても、貯金しつつ生活していけるよう、日頃から生活を調整しておくことが大切です。
また、病状により、「月に○日就業できなかった」といった場合も、その分の手当を受給することができます。詳細は医師と相談することになります。
会社が書類を書いてくれない場合は?
傷病手当の申請書は3枚で1セットとなっています。病院・会社・本人でそれぞれ記入するようになります。
そのため、手当の受給を快く思わない会社の場合は、必要書類への記入を拒否されたり、正しい情報を書いてもらえないこともあります。また、「休職」のステータスが認められず、退職を迫られることもあるかもしれません。
そうなった時は、健康保険組合や労働組合など第三者への相談が必要となります。
なお、傷病手当に関しては退職後も受け取ることができるため、会社の協力が得られないかつ、すぐに次の仕事に就くことも難しい場合は、退職してから受給することも視野に入れた方が良いです。
傷病手当が受給できる期間は、最長1年6ヶ月です。
傷病中の年金保険料支払いについて
傷病手当受給中も、国民年金、または厚生年金の支払い義務は発生したままです。
しかし、傷病により働けない旨を市役所や区役所に申請することで、一定期間の免除を受けることができます。
その分はいずれ支払うようになるのですが、大変な時にはひとまずストップすることができるので、面倒でも届出を行いましょう。
失業した
自己都合退職、会社都合退職どちらの場合も含めて書きたいと思います。
自己都合退職の場合は、3ヶ月の待機期間を経て失業保険を受給するのが一般的です。
ここで言う「自己都合退職」とは、会社に居られないために退職願を提出して退職したことを指しますが、病気などを理由に自分から退職した場合は、必ずしも自己都合退職となるわけではないようです。
自己都合退職?会社都合退職?
この線引きは結構難しいです。自分では「会社から退職の勧告を受けて退職した」と思っていても、会社からすると会社都合退職にされると都合が悪いので、自己都合退職とすることがほとんどです。
退職理由は、離職票の「離職理由コード」欄の値によって定義されます。場合によっては会社に訂正を求める必要もあるでしょう。
しかし、上記にも記載した通り、病気などを理由に退職せざるを得なくなった場合は、会社都合退職扱いで待機期間無しの失業保険受給を受けることができます。
ハローワークや医療機関の協力も必要となりますが、しかるべき診断書などの書類を用意して申請を行うことで、自己都合退職にされようとも会社都合退職と同等の扱いを受けることが可能です。
この辺りはよく確認しましょう。
派遣社員の場合は?
派遣社員の場合は、自己都合、会社都合退社にどういった基準で決まるのか微妙なところです。
派遣先からも契約を切られ、派遣元からも紹介できる仕事がないと言われれば会社都合退職ともなりそうですが、次の仕事の紹介を断れば自己都合退職となりそうです。
私の場合は、元々有期だった仕事の契約が終了して、次の仕事の紹介を断っても会社都合退職となったこともありました。
この辺りは、派遣会社の営業との関係にもよってくるかもしれないので、日頃から行いを良くしておくことは大切ですね。
再就職手当について
失業保険を受給できる期間は、概ね3ヶ月〜6ヶ月です。
受給期間の間に仕事が決まれば、受給できる予定だった金額の何割かを一括で受け取ることができます。
なお、一度この権利を利用すると次の職場がいわゆる“ハズレ”だった時にしばらく失業保険を受給することができなくなるため、申請は慎重に行いましょう。
次の仕事に就いて少し経ってからでも大丈夫です。なお、「次の仕事」が派遣などの非正規雇用であった場合も受給が可能です。
傷病手当との兼ね合いについて
上で取り上げた傷病手当と、失業保険については同時に受給することはできません。
多くの場合、傷病手当を受給し終えてから、または回復の診断が下ってから失業保険を受給するようになります。
なお、傷病手当受給中に就労できるようになって次の仕事が決まった場合、「再就職手当」を受給することはできません。
再就職手当はあくまでも、失業保険受給中に、受給期間を満了せず就業できた場合にのみ適用されます。
会社が残業代や給料を払ってくれない
これはよくあることで、多くの方が泣き寝入りとなっていることがほとんどです。
100%を回収することが難しいとしても、工夫次第である程度までは回収することができます。
未払い残業代について
残業代が未払いとなる理由は様々です。
- 就業規則でそのように決めているから
- 現場への移動時間は業務時間として計算しないから
- それが業界の”常識”だから
- 本人の仕事が遅いから
といった理由から
- 定時を定めていないのだから”残業”という概念はない
- 代わりに飯おごってやったから
といったビックリするような理由もあります(実話です)
しかし、法治国家の日本において、このような“自分ルール”がまかり通るはずはありません。
法定労働時間を越えた分は、割増賃金として支払われるべきです。
法定労働時間は、労働基準法で定められている労働時間の限度です。原則として1週で40時間、1日に8時間となります。
「うちの会社は1日10時間労働だ、雇用契約書でも書いてある」というような会社もありますが、この場合は8時間を超えた2時間部分は無効になり、結局8時間と残業2時間というような計算となります。名古屋社会福祉労務士センター
具体的な手段などは別途記事にしたいと思っていますが、大切なことは労働時間を証明できる証拠を持つことと、請求する手段を持つことの二つです。
労働時間の証明というのは、その時間まで会社で仕事をしていたことが証明できる証拠となるもので、録音や写真、メールなどが有効です。スマホがあればいくらでも取得できます。
また、社内ネットワークのサーバーにあるファイルを更新するのも有効です。ファイルの更新を行なっていなくても、Webサーバーのアクセスログを取ればクライアントPCからのアクセス時刻を解析することは可能です。
請求手段については、実際に請求の根拠となる金額を算出できることと、内容証明郵便などの作成スキルが必要となります。
この辺りはWordが使えるレベルであれば、文例や事例はインターネット上や書籍にたくさん記載があるのですぐに作成することができます。
機会があれば事例も紹介したいと思います。
未払い残業代請求ができない場合もあるため注意!
例外として、以下の場合は未払い残業代の請求ができない、または法的に正当な額を請求できない可能性もあります。
- 会社が36協定を結んでいる
- 「正社員」と見せかけて実は個人事業主の請負契約などである
このような場合は、通常の労働法によって残業代を算出して請求することが難しいかもしれません。
しかし、36協定というのは「結んでいれば残業させ放題」といった性質のものではないはずなので、しっかりと調べて知識をつけることで抜け道はあるはずです。
未払い給料について
こちらも未払い残業代と同様、実際に請求の根拠となる証拠(その日働いた分の賃金が支払われていないこと)と、請求する手段が必要です。
よく、「入って一週間以内で辞めたら給料は支払わない」といった念書に同意を求める会社がありますが、これは違法です。
辞めた手前請求しづらいですが、自分の時間と労力を費やした分の対価はしっかり受け取るべきだと思います。
まとめ:意外と充実している日本のセーフティーネット
今回紹介した制度や手当は、全て実際に私が利用したことがあるものです。
なお、私は法律の知識なども一切なく、周りにそのような仕事をしている人もいません。
しかし、自分で色々調べたり、周りに協力を求めることで、意外と日本のセーフティーネットは充実していることに気がつきました。
繰り返しとなりますが、当記事は働かずお金を得ることを推奨するものではありません。
ただ、自分が窮地に追い込まれた時に、知らないと損をして困ることになるので、セーフティーネットについてはきちんと知っておく必要があると思います。
もちろん、何かあった時のために、しっかりと貯金をストックしていることが一番大切です。また、シンプルに必要最小限の生活ができていれば、何かあった時に急に困ることも少ないはずです。
今回紹介した内容で、より具体的な情報の需要があれば今後も紹介できればと思います!
それでは、よいシンプルライフをお送りください^^
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